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9月, 2022の投稿を表示しています

ソローキン『親衛隊士の日』と怪物プーチン

  「皇帝化したプーチンを予言した」と書いてある帯に惹かれて、ロシアの現代作家として知られるウラジーミル・ソローキンの河出文庫『親衛隊士の日』を買って読んだ。2013年に河出書房新書から出版された単行本を文庫にしたものだが、訳者の松下隆志氏はより現実味を増している世界観を考慮、古めかしい言葉を多用した翻訳文を全面的に見直したという。原書の発刊は2006年で、日本語訳の河出文庫は今年9月22日に発刊された。  同書は2028年のロシアを描いたディストピア小説であり、そのロシアにはイワン雷帝を想起させる絶対的な権力を持つ皇帝が支配し、貴族と平民に分けられた封建的な世界が舞台。主人公は、ロシア帝国の秩序を暴力で支配している「オプリーチニナ」の1人。オプリーチニナは、イワン雷帝が絶対的支配の及ぶ地域に任命した直属の親衛隊士で、その使命は国家や皇帝に敵対する貴族の根絶にあり、訳者解説によると1970年には6週間にわたる殺戮と破壊で2千から1万5千人という犠牲者がでた。2028年の親衛隊士は馬ではなく、真紅のベンツを乗り回している。  ソローキンがこの   『親衛隊士の日』で描いたのは、皇帝化したプーチンが力と恐怖で支配する西側世界と訣別した近未来のロシアと言われる。このようにプーチンが創り上げようとしている帝国について絶えず考えていることを実証するかのように、2月24日のロシアのウクライナ侵攻を受けて急遽エッセイ『プーチン 過去からのモンスター』を発表、世界各国で翻訳され南ドイツ新聞や英ガーディアン紙などに掲載された。日本では、5月1日発行の「文藝」夏季号が 同じ松下隆志氏の翻訳を 掲載している。  「2022年2月24日、この20年間ずっとプーチンを覆っていた『啓蒙専制君主』の鎧がひび割れ、ばらばらに崩れた。世界はモンスターを目にした。己の願望に狂い、決断において無慈悲なモンスターを。自分自身の絶対的な権力、帝国的な攻撃性、ソ連崩壊のルサンチマンによってあおり立てられた敵意、西側の民主主義に対する憎悪をたっぷりと吸い込みながら、怪物は年を追うごとに力を蓄え、次第に成長していった。今やヨーロッパは、かつてのプーチンとではなく、『ビジネス・パートナー』や『平和協力』の仮面を脱ぎ捨てた新たなプーチンと交渉しなければならない。彼との和解はもはやあり得ないだろう。」  激烈な冒頭の言

安城市榎前町ひまわり畑が開花

  安城市榎前町の長田川沿いに「ひまわりの里」という看板を掲げた畑があるが、この畑と道路を挟んだ隣の畑に植えられているひまわりの花が9月26日に満開となった。特に長田川沿いの畑の方がぎっしり黄色い花が並び、壮観な眺めとなっている。すぐ近くには「ひまわり広場」と看板を掲げた運動場があり、その西側は榎前八劔神社と榎前農村公園。  ひまわりの里の畑は、一般廃棄物処理場跡地の土壌改良を目的に、榎前町内会がブロックローテーションでれんげ、麦、ひまわりなど植えているもの。ひまわりは時期をややずらして毎年秋に花が開くように種をまいており、今年も9月中旬に黄色い花を咲かせた。ひまわりの里の看板は、2カ月前には確かにあったが、今回訪れたら台風のせいか枠組しか残っていなかった。れんげは毎年4月に花を咲かせるという。 長田川沿いの畑にはびっしりひまわり 午後、川と反対の道路から見たひまわり ひまわりのない場所多い運動場側の畑  昨年9月16日付中日新聞ウェブニュースではひまわりの里を取り上げた。「計1.1ヘクタールに約10万本が植わり、10日以降、順に花を咲かせている」とし、次のように記載している。「15日朝にも、訪れた人たちがカメラやスマホを構え、“映える”一枚を狙っていた。夏の終わりに咲くよう、7月22、23日に種をまいた。8月中旬に雨が続いた影響などで生育が遅れたが、8月末には住民ら約20人がヒマワリの茎に巻き付いた雑草を取り除くなど世話を続けてきた」。 6月初め、草地に立つひまわりの里の看板 9月26日、枠しか残っていない看板 jakuyu.com  

クルコフ『ペンギンの憂鬱』

   たまたま書店に置いてあった「新潮クレスト・ブックス2022-2023」のリーフレットをもらって見ていたら、「今こそ読みたい、ウクライナとロシアの本」というページがあった。そのページにウクライナ・キーフ在住のロシア語作家、アンドレイ・クルコフの『ペンギンの憂鬱』が紹介されていた。棚に並んでいる同書を手に取ると、「欧米各国で絶大なる賞賛と人気を得た長編小説。憂鬱症のペンギンと暮らす憂し短編小説家」という帯が巻かれており、全く馴染みのないウクライナ文学に惹かれて購入、早速読んでみた。  リーフレットによる小説のストーリーは、「舞台はソ連崩壊後のキーフ(キエフ)。売れない小説家のヴィクトルは、動物園から引き取った憂鬱症のペンギン、ミーシャと暮らす。ある日、新聞社から依頼されたのは、まだ生きている大物たちの追悼記事を書く仕事。ところが、書かれた人物は次々と奇妙な死を遂げてゆく⏤」。この解説通りのカフカ的物語が小ばなしを集めたようなスタイルで淡々と綴られているが、ペンギンと一緒に暮らすという物語の基調が非常に秀逸だ。解説を読むと飼っているペンギンを見せて欲しいという記者が現れるほど、その同居生活はリアリティが感じられる。  作家のアンドレイ・クルコフはレニングラード(現サンクトペテルブルク)生まれで、3歳の時に一家でキーフに移住して現在まで同地で暮らしているという。ロシア語で作家活動をしているため、作品の帯には「新ロシア文学」の文字が記されているが、自分では「ロシア語で書くウクライナの作家」と評している。ただし、ウクライナの民族主義が高揚すると共に、非ウクライナ語作家の立場は厳しくなりつつあるようだ。1991年8月にウクライナは独立しているので、1996年に出版したペンギンの憂鬱は独立直後の混沌としたキーフを背景にしている。 絶版だがAmazonに高額の中古本は出品   新潮クレスト・ブックスの日本語訳は2004年9月に出版されたが、2006年8月に同じ新潮クレスト・ブックスで『大統領の最後の恋』が発刊された。帯には「ウクライナ大統領まで昇り詰めた男の愛の遍歴」と記載されているが、売れ行きが芳しくなかったためか今は絶版となっている。そして、Amazonで販売されている中古本を見ると、最も安いのが12000円となっている。復刊ドットコムには「私の住む街では図書館にも置いてい

安城学園高校学園祭でジャクユーのパネル展示

学園祭前日に設置したパネルの前でジャクユー葛西代表と学生たち     安城市の安城学園高等学校は9月22、23日の両日、本館、西館、体育館を使って学園祭を開催した。この学園祭で初日、一般社団法人ウクライナ人道支援ジャクユーサポートのパネル展示が行われた。展示パネルは、ウェブサイトで公開したウクライナ在住アーティストの作品『生存と強さ』(Kutty Shark)、イルピンの破壊された町を復興する人々の写真、イルピンで流されたフェイクニュースなどとジャクユーについての解説で、本館2階の通路に展示した。  学園祭は、同校が創立110年を迎えることから「一歩 ~ 110年の思いを未来へ ~ 」をテーマに開催。校内ではクラブ展示、各クラス企画発表を中心に、学生のエンターテイナー企画、芸能人を招いた企画も盛り込んで繰り広げた。今回、5月にジャクユーサポート葛西孝久代表理事が同校生徒会主催のウクライナ学習会に講師として協力したことから、より以上にウクライナ問題について理解を深めてもらうためパネル展示を行ったもの。 学園祭冊子 開催日前日の体育館前 jakuyu.com

カルシュ・オーケストラ「ステファニア」

https://youtu.be/Z8Z51no1TD0   Stefania ミュージックビデオ  ウクライナのカルシュ・オーケストラが歌う「ステファニア」のミュージックビデオ、ロシア軍に破壊された街を歩く女性兵士のリアルな映像が物悲しい調べと共に流れ、日本でも話題を集めつつある。このステファニアは5月にイタリアで開かれた「ユーロビジョン・ソング・コンテスト2022」で優勝した曲で、優勝した翌日にミュージックビデオは公開された。   9月にアップされた文春オンラインの伊藤めぐみレポートでは、「ブチャやイルピン、ボロジャンカなどロシア軍に占領や攻撃をされ、その後解放されたばかりのウクライナの街で撮影されているのだ。爆撃でボロボロになった建物の前で、迷彩服を着た母親役の女性が離れ離れだった子どもを見つけ出し、家族に預け、そして1人で前線へと旅立っていくストーリーが描かれている。カルシュ・オーケストラも、本物の燃えた残骸と煤だらけの部屋を背景に歌っている。戦場の生々しさと映画のような雰囲気を持ち合わせたクオリティーの高い映像だ」と記載している。  歌は母ステファニアへの讃歌だが、ニューズウィーク日本語版によるとロシア軍の侵攻で多くの国民が「母なるウクライナ」を連想するようになり、ステファニアは今では「わが戦争の讃歌」と呼ばれているという。9月23日午前10時時点の再生回数は38,780,084回と、何と4千万回に近づきつつある。  Stefania Стефанія мамо, мамо Стефанія Розквітає поле, а вона сивіє Заспівай мені, мамо, колискову Хочу ще почути твоє рідне слово Вона мене колисала, дала мені ритм І, напевне, силу волі не забрати в мене, бо дала вона Напевне, знала, може, більше і від Соломона Ломаними дорогами прийду я завжди до тебе Вона не розбудить, не будить, мене в сильні бурі Забере в бабулі дві ду

現代アーティストのウクライナ支援オークション

  東京・銀座のポーラミュージアムアネックスは11月、ウクライナの子どもたちを支援するチャリティオークション「Spring is around the corner」展を開催する。昨年のオークションでは、22,121,730円を日本赤十字社へ「新型コロナウィルス感染症への対応等に関する寄附金」として全額寄付した。 ウクライナへの軍事侵攻は未だ出口の見えない状況が続いているため、「戦禍に苦しむ方々に手を差し伸べたい。とりわけ子どもたちへの支援をしたい」という声がアーティストからも数多く出て、今年はウクライナの子どもたちへの支援を目的に実施する。 チャリティオークションは「春」をテーマに企画に賛同した同ギャラリーに縁のある20人のアーティストが各々1点、作品を制作する。作品は展示会場に展示すると共に、サイレントオークション形式でオンラインで入札できる(11月7日に入札サイトオープン予定)。またドローイング作品の抽選販売に加え、今回は要望の多かったカタログも販売する。オークション、ドローイング及びカタログの販売収益は、ウクライナの子どもたちへ支援を行っている公益財団法人日本ユニセフ協会「ウクライナ緊急募金」へ全額寄付する予定。 出展作家は、イイノナホ、岩田俊彦、開発好明、柏原由佳、菊池敏正、舘鼻則孝、田中圭介、津上みゆき、中村弘峰、中村萌、流麻二果、野口哲哉、ヒグチユウコ、福井利佐、増田セバスチャン、水野里奈、ミヤケマイ、横溝美由紀、Ryu Itadani、渡辺おさむ(五十音順)。*サイレントオークションは競りは行わず入札形式のみのオークションで、入札された中で最高額をつけた方が落札者となる形式。  会期は11月2日から12月4日までの33日間。開館時間は午前11時から午後7時まで(入場は午後6時半)、入場無料。会場は、銀座1丁目にあるポーラ銀座ビル3階のポーラミュージアムアネックス。主催はポーラ・オルビスホールディングス。 jakuyu.com    

カテリーナに聞く民族楽器バンドゥーラ

  一般社団法人ウクライナ人道支ジャクユーサポートが後援する「ウクライナチャリティーコンサート」は、いよいよ10月17日に刈谷市総合文化センターアイリス大ホールで開催される。出演するのはウクライナ出身のバンドゥーラ奏者で歌手のカテリーナ・グジー。ウクライナの民族楽器バンドゥーラはどんな楽器なのか、日刊ゲンダイDIGITALでは9月14日に公開した暮らしニュースの記事でカテリーナ・グジーに詳しく聞いている。ここでは、コンサートの予習も兼ねて一部抜粋して紹介してみた。 「バンドゥーラは弦が65本あります。すべての楽器の中で一番弦の数が多い弦楽器です。重さは8キロあります。12世紀ごろ、2、3キロの小さいものを目の不自由な男性が語りながら奏でていたのが最初で、日本の琵琶に近いといわれています」。 「バンドゥーラを作っているのは世界ではもちろんウクライナだけで、2つしかないバンドゥーラを作る工場は戦争で壊されてしまいました。しかも、楽器の作り手までが戦争に駆り出されています。今後、バンドゥーラの製造はどうなってしまうのか」。バンドゥーラはいくらくらいするものなのか。ウクライナ国内では初心者向けは10万円から15万円。プロ仕様になると、カスタマイズされて倍にも3倍にもなるという。値段はともかく、製造できなくなったらバンドゥーラという文化そのものを継承できなくなるわけだが。  カテリーナは毎日大事にバンドゥーラを背負って全国を飛び回っている。最近は移動が激しくて楽器が悲鳴をあげることもあるという。「ウクライナに似ている寒冷な北海道から、暖かい沖縄に急に移動すると気温差で楽器がびっくりしてチューニングが狂います。木製の繊細な楽器なんです。反対にケースから出さず動かさないでいると弦が切れ木が割れることもあります」。海外公演の場合は機内に持ち込む。その分、飛行機代がかさむ。「私の隣の席に置くので1人分の追加料金を払っています。楽器は機内食を食べませんが」。  詳細なインタビューの掲載されている日刊ゲンダイDIGITALの記事のアドレスは次の通り。  https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/311320  10月17日のウクライナチャリティーコンサートは、開場が午後6時半からで午後7時に開演。入場料は999円(中学生以下無料)で

新書『ウクライナ戦争の200日』

  文春新書『ウクライナ戦争の200日』が9月20日に発刊される。気鋭のロシア軍事・安全保障専門家の小泉悠が評論家、芥川賞作家、映画評論家ら7人と「ウクライナ戦争200日」を多角的に語り合い、見つめ直す待望の対談集。本文256ページで、税込935円。  〈作品紹介文〉 今回の戦争によって、米国一極の基に世界が安定しているのではなく、複数の大国がそれぞれ異なる世界観を掲げて「競争的に共存する」世界に変化した⏤。ロシアのウクライナ侵攻は、ポスト冷戦時代の終焉を告げる歴史的な転換点となった。「理解できない世界秩序への反逆」の続発を予感させる今後の世紀を、複雑な世界を私たちはどう生きるのか。戦争が日常化する今、思考停止に陥らないために。  〈目次〉    はじめに    1: ロシアは絶対悪なのか 東浩紀×小泉悠   2: 超マニアック戦争論  砂川文次×小泉悠   3: ウクライナ侵攻 100日の「天王山」 高橋杉雄×小泉悠   4: ウクライナの「さらにいくつもの片隅に」 片渕須直×小泉悠   5: 「独裁」と「戦争」の世界史を語る ヤマザキマリ×小泉悠   6: ウクライナ侵攻 戦争の分岐点  高橋杉雄×小泉悠   7:ドイツと中国とロシアの世界勢力図 マライ・メントライン×安田峰俊×小泉悠   おわりに  20日発刊と出版社の文藝春秋では発表しているが、19日午後にジュンク堂名古屋店に立ち寄ったら、すでに新書の棚に並んでいた。取次の配本が大型店優先なのかと思い、早速購入した。「はじめに」という前書きでそれぞれの対談者について小泉悠が解説しており、高橋杉雄はテレビによく顔を合わせているという防衛研究所の室長で最もボリュームがある。片渕須直は映画『この世界の片隅に』の監督で、高橋杉雄は防衛研究所の別の研究室長。3人対談の相手は、友人の日本在住ドイツ人と中国に詳しいルポライターという。  対談は開戦の初期段階に行われたものも含めているため、情報が誤っていたり、見通しを外したりもしているという。基本的には当時のまま再録、「戦争が始まって1カ月時点、3カ月時点で我々が何を考えていたのか。何を恐れていたのか。これもまた本書が伝えたい『空気感』である」とおわりの言葉。 jakuyu.com  

ウクライナの少女が絵と共に綴る日記

 昨日までマンガと小説が大好きな普通の女子高生だった、ズラータ・イヴァシコワ。母が必死で工面してくれた16万円をもって戦火が広がる故郷からあこがれの日本を目指す─ 。ウクライナの女子高生に訪れた、やさしい奇跡と生きることへの挑戦。彼女の絵と共に綴る、16歳のリアルな日記。10月1日、世界文化社から『ウクライナから来た少女 ズラータ、16歳の日記』が発刊される。定価は1650円(税込)。  人との関わりが苦手だった少女が、人の想いを受け取りながら「どう生きたいのか?」、「何をすべきか?」、様々な選択に迫られながら「日本避難」を果たし、今も生きるために戦い続けている。祖国ウクライナの街に響く爆撃音。気丈な母の決断。危機的状況の中、日本人取材スタッフとの奇跡的な出会い。不安の中、親友と呼べる友、信頼できる日本人との出会い。平和な日常が一変し「生きる」ことを迫られた、少女の目から見えた「戦争」を綴った1冊である。ズラータ・イヴァシコワのウクライナから日本への避難の様子は、TVメディアでも取り上げられ話題になった。 ----------------------------------------------------------------------------------------------------------------  担任の先生が、その日は教壇に立つと、いきなりこんなことを言った。 「明日から戦争になります」  続けて、戦争がもしも始まったらどうすべきかという説明をしてくれた。「もしも実際に爆撃が始まるようだったら、シェルターを見つけて、そこに食料や必要なものを運ぶように。そして長期的に避難できるところを今から探して、なるべくそこに行くようにしなさい」  人は本当に驚くと言葉が出ないものなのかもしれない。先生にそう言われると、ますます現実のことなのだという重みが感じられて、クラスの空気は沈痛なものになった。「シェルター」「食料」「避難」。昨日までマンガのなかで出ていた単語が自分の生活の一部になるなんて何人が想像していただろう。 (第2章「それは突然やってきた  皆さん、明日戦争になります」より) --------------------------------------------------------------------------------

ウクライナ:新学年がスタート~安全な学校は6割未満

    日本ユニセフ協会報道資料【2022年9月1日 キーウ/ニューヨーク発】    「ウクライナで続く戦闘は、400万人の子どもたちの新学年の開始を妨げています」と、ユニセフ(国連児童基金)事務局長キャサリン・ラッセルは、3日間のウクライナ訪問を終えて述べた。「新学年の始まりは、子どもたちが再び教室に戻り、友達や先生と夏の思い出を語り合う、興奮と期待に満ちた時期であるべきです。しかし、ウクライナの400万人の子どもたちの心は、不安に覆われています。子どもたちは、学校に戻りつつありますが、学校の多くは戦闘の中で被害を受けています。先生や友だちが学校にいて迎えてくれるかどうかもわかりません。多くの親が、安全に不安を抱き、子どもを学校に送り出すのをためらっています」。 (写真はオデーサの子どもにやさしい空間 )  全国で数千の学校が損傷または破壊され、政府によって安全で再開が可能と判断された学校は60%未満となっている。ウクライナの新学年初日、ラッセルは紛争初期の数週間で被害を受け、修復された小学校を訪問した。避難シェルターの収容人数に限りがあるため、一度に登校できる生徒は300人で、紛争前のわずか14%。   ユニセフは政府と協力して、ウクライナの子どもたちが、安全だと判断されれば教室で、対面が不可能な場合はオンラインやコミュニティベースの代替手段で、学習を再開できるよう支援している。紛争が始まって以来、約76万人の子どもたちが正規または非正規の教育を受けている。また170万人以上の子どもたちと養育者が、ユニセフが支援する メンタルヘルスと心理社会的支援を受けた。 「ウクライナの学校は、校庭よりも避難シェルターを作らなければならず、子どもたちは交通安全ではなく不発弾について教えられています」と、ラッセルは付け加えた。「これが、ウクライナの生徒、保護者、教師にとっての厳しい現実なのです」。  子どもたちの学習を再開させるための取り組みとして、学校の修復、教師や生徒へのノートパソコンやタブレット端末、その他教育物資の提供、紛争下の安全確保に関する子どもたちや教師への指導などが行われています。「ウクライナの子どもたちの教育が大きく損なわれています。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行が2年以上続き、紛争の激化から半年が経過した今、彼らの心身の健康は大きな負担に

バンドゥーラコンサートのチケット申込み受付開始

  バンドゥーラ奏者・歌姫カテリーナ・グジーの「ウクライナ チャリティーコンサート」が10月17日(月)午後7時、JR東海道線・名鉄三河線刈谷駅前の刈谷市総合文化センターアイリス大ホールで開催される。コンサートでは、カテリーナ・グジーがウクライナと日本の曲を奏でると共に、観世流旬の会の舞囃子や同コンサートのために集まった約80人の大合唱団「かきつばた」もさとうきび畑などを合唱する。開場は午後6時半から。  入場料は999円(中学生以下無料)で、全席自由。    チケット購入申し込み先  support@jakuyu.com        ①氏名、②携帯・メールなどの連絡先、③希望枚数をご記入ください。    チケットはコンサート当日に受付にてお渡しします。    * AERAdot.(アエラドット)は8月30日、カテリーナ・グジーが首都キーウから呼び寄せた母マリヤ・グジーさんと共に、戦争の実情を語ったインタビュー記事を掲載した。             https://dot.asahi.com/wa/2022082500058.html?page=1 jakuyu.com  

マイダン革命題材の映画『オルガの翼』公開

  8月30日付東京新聞夕刊で、親ロシア派のヤヌコビッチ大統領を追放したウクライナのマイダン革命(2014年)を題材にした映画『オルガの翼』がトップ記事に取り上げられた。主演のアナスタシア・ブジャシキナはルガンスク州出身で、欧州選手権出場歴もあるアスリート。サーカス団に所属していたが、ロシア侵攻後、ウクライナからスイスに脱出した。その経緯、現在の心情などをオンラインインタビューで語っている。映画は東京・渋谷のユーロスペースで9月3日に公開され、愛知県では名古屋市の名演小劇場で9月23日から上映される。  映画は、マイダン革命を機に生きるためにウクライナを去り、スイスに渡った15歳のオリガが体操選手としての夢と祖国への愛の間でもがきながら自らの運命を切り開いていく物語。1994年生まれ、スイス出身の新鋭エリ・グラップ監督の初長編監督作。マイダン・デモ参加者が実際に現地キーウで撮影した映像を使用するなど、「圧倒的な緊張感でいま知るべき事実が映し出される」(映画解説から)。フランス・スイス・ウクライナ合作。2021年カンヌ国際映画祭の批評家週間で、監督と共同脚本家が同作の曲本で「SACD AWARD」を受賞した。 東京新聞が主演アスリートにインタビュー  主演のブジャシキナは、2020年9月の撮影終了後は国内のサーカス団に所属していた。北東部の都市ハルキウにいた時にロシアの侵攻が始まり、近くにロケット弾が落ちたことから国外へ脱出、今はスイスのサーカスに所属する。ただ、父母や祖母が祖国にいるため、「心配で仕方ない」、「ウクライナの人たちが防空壕にいる間、他の国の人たちが日常生活を満喫しているのを見ていられない」と、オンラインインタビューで心情を吐露している。  〈追加〉 9月15日号の週刊文春「シネマチャート」で、星印4個が4人、星印5個が1人と高評価を得ている。このうち星印5個を付けた映画評論家森直人氏は「平易かつ完璧。実際の体操選手を起用し、スポートと政治、多様な青春の主題を澄明に凝縮した。90分の充実に心打たれる」とコメント。 jakuyu.com