昨日までマンガと小説が大好きな普通の女子高生だった、ズラータ・イヴァシコワ。母が必死で工面してくれた16万円をもって戦火が広がる故郷からあこがれの日本を目指す─ 。ウクライナの女子高生に訪れた、やさしい奇跡と生きることへの挑戦。彼女の絵と共に綴る、16歳のリアルな日記。10月1日、世界文化社から『ウクライナから来た少女 ズラータ、16歳の日記』が発刊される。定価は1650円(税込)。
人との関わりが苦手だった少女が、人の想いを受け取りながら「どう生きたいのか?」、「何をすべきか?」、様々な選択に迫られながら「日本避難」を果たし、今も生きるために戦い続けている。祖国ウクライナの街に響く爆撃音。気丈な母の決断。危機的状況の中、日本人取材スタッフとの奇跡的な出会い。不安の中、親友と呼べる友、信頼できる日本人との出会い。平和な日常が一変し「生きる」ことを迫られた、少女の目から見えた「戦争」を綴った1冊である。ズラータ・イヴァシコワのウクライナから日本への避難の様子は、TVメディアでも取り上げられ話題になった。
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担任の先生が、その日は教壇に立つと、いきなりこんなことを言った。 「明日から戦争になります」
続けて、戦争がもしも始まったらどうすべきかという説明をしてくれた。「もしも実際に爆撃が始まるようだったら、シェルターを見つけて、そこに食料や必要なものを運ぶように。そして長期的に避難できるところを今から探して、なるべくそこに行くようにしなさい」
人は本当に驚くと言葉が出ないものなのかもしれない。先生にそう言われると、ますます現実のことなのだという重みが感じられて、クラスの空気は沈痛なものになった。「シェルター」「食料」「避難」。昨日までマンガのなかで出ていた単語が自分の生活の一部になるなんて何人が想像していただろう。
(第2章「それは突然やってきた 皆さん、明日戦争になります」より)
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日本に行きたい。なんとか生き延びて日本を見てみたい。日本を見てからじゃないと死ねない。戦争のなかでも、そればかりを思ってきた。もうこれまでと思うぐらい絶望する場面は何度もあった。でも、そのたびにありがたいことに救いの手が差し伸べられて、多くの人が親身になって応援してくださって、立ち上がってこられた。人が苦手だったはずの私が、人に助けを乞わなくては前に進めないことを知って、素直に「助けてください」と頭を下げてこられた。それは、学校や教科書で学ぶことよりも、ある意味大きな、私の人生を根っこからひっくり返すほどの一大転機となった。
(第16章「戦争になっても故郷が荒れても、それでも人を信じる やっぱり、日本が好き、人が好き」より)
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著者/ズラータ・イヴァシコワ
ウクライナ ドニプロ出身。日本の太宰治が大好きで小説や漫画、アニメをこよなく愛する16歳。ウクライナ侵攻後、母親の英断で日本への避難を目指す。5歳のときから絵画を習っており、現在、ウクライナに残した母を気にかけつつも、日本で絵の仕事に就くことを夢見て日夜勉学にいそしむ。絵が上手く、日本語が話せる彼女の日本避難の様子は、TVメディアからも注目された。
ズラータの絵を見たい。
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