〈記録されているのは、戦争によって“日常の言葉の意味が変わった”という体験。「風呂」は爆撃から“身を守る場所”へ変化し、「きれい」は戦争犯罪と結びついて“危険”を意味するといった事態が人々の中で起きています。〉
8月23日午後7時30 から放映されたNHKのクローズアップ現代は、「戦争が“言葉”を変えていく ある詩人が見たウクライナ」のタイトルで、今年5月にウクライナで出版された『戦争語彙集』を取り上げた。日本文学研究者ロバート キャンベルによる日本語訳は、同氏の解説やウクライナ訪問記を加えて、岩波書店が今秋刊行する予定。
『戦争語彙集』は、現地の詩人オスタップ・スリヴィンスキーやその仲間が市井の人たちから聞きとった「ストーリー」を短編にまとめたもの。すでに10か国語での翻訳が決まるなど、異例の早さで世界に広がっている。ロバート・キャンベルの日本語訳は、タラス・マルコヴィッチ氏の英訳を重訳している。
クローズアップ現代によると、語彙集のタイトルには「風呂」「星」「林檎」「夢」などすべて日常のことばが並び、それにまつわる体験を通して、戦争に直面したことで身近な“ことばの意味”が変わっていく様子が記録されている。オスタップ・スリヴィンスキーは、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻後、地元リビウに国内から避難してきた人々を支援するボランティア活動する中で、“言葉”の聞き取りを始め、百人以上から聞き取ったストーリーの一部を「戦争語彙集」として出版した。「人々の物語が忘却されてしまわないように、戦争で言葉の意味が変えられていく過程を記録するのが自分の使命」。
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