ちくま新書の1月新刊(7日発売)として、毎日新聞記者・真野森作著『ルポ プーチンの破滅戦争』が発刊された。副題は「ロシアによるウクライナ侵略の記録」とあり、新聞社のウクライナウォッチャーとして、戦争勃発直前と戦時下のウクライナの緊迫した状況を現地の人々への取材を交えてレポートしたルポルタージュである。著者は、2014年のウクライナ紛争を現地取材した『ルポ プーチンの戦争-「皇帝」はなぜウクライナをねらったのか』も、筑摩選書から発刊している。
筑摩書房の機関紙「ちくま」1月号では、この新書について次のように紹介。「なぜウクライナ戦争が起こったのか、戦時下で人々はどうしているのか。虐殺の街で生存者の声を聞いた記者が、露プーチン大統領による理不尽な侵略戦争を告発する」。記者は2月にウクライナのキーフに取材で滞在していたが、ロシアの軍事侵攻が始まるとすぐウクライナを脱出(2月20日にキーウから夜行列車でリビウに、24日朝にタクシーでポーランド国境に)、ポーランドに逃れ、日本に一時帰国、戦況が落ち着いた4月末にウクライナに入り、ブチャなどを取材している。
大手新聞社は記者に安全確保のための退避命令を出しているため仕方ないかもしれないが、この本を読むともう少しリビウに留まって戦争直後の取材を継続して欲しかったと思ってしまう。開戦直前に行ったリビウ市長へのインタビューで緊迫感あふれる内容が伝わってくるだけに、さらにこういった開戦直前、直後のインタビューがあればと残念な気もした。
インタビューでは、開戦前にキーウで小説『ペンギンの憂鬱』で知られるアンドレイ・クルコフに行っているのが個人的には興味深かった。特に「ウクライナ人の精神性はアナーキーであり、個人主義に基づいている。一方、ロシア人の考え方は君主制に基づき、彼らはツァーリの周りに集まるのが大好きだ。ロシア人が『私たちは兄弟だ』と言うとき、それは『あなたは我々に属する』という意味だ」というクルコフの言葉は鋭い。
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